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講演会レポート
パーキンソン病 患者さんと家族のための公開講座 (2018/03/25)

パーキンソン病について知っていますか?
〜高齢者に多いパーキンソン病の症状、治療の選択肢、日常生活の注意点まで〜

3月25日、新宿で「パーキンソン病 患者さんと家族のための公開講座」が開かれました(共催/日本メドトロニック、サンケイリビング新聞社)。2人の専門医によるパーキンソン病の症状や治療法についての 最新情報の話とともに、患者さんからの質問に答えるコーナーも。その一部を紹介します。

座長 永山寛先生
日本医科大学付属病院
神経内科 准教授
座長 永山寛先生
深谷親先生
日本大学医学部附属板橋病院
脳神経外科 診療教授
深谷親先生
下泰司先生
順天堂大学医学部附属練馬病院
脳神経内科 先任准教授
下泰司先生

パーキンソン病のさまざまな症状と薬物療法について
講演・下泰司先生

パーキンソン病は脳内のドパミンという神経伝達物質が減ってしまい、運動症状などが出る病気で、高齢になるほど発症する人が増えてきます。歳をとると誰でもドパミンが減るのですが、この自然の変化が少し早目に起こってしまうのだと理解してください。日本では患者さんは1000人に1人〜1.5人といわれています。

運動症状としては、まず、手足のふるえがでます。また、筋肉の固さ(筋強剛・固縮)や動作の鈍さ、転倒しやすさと合わせて、4大症状といわれています。さらに、非運動症状もあり、気分が落ち込む、疲れやすい、便秘、頻尿、体の痛み、物忘れ、不眠、においがわからないなどがみられます。

MRIや血液検査などの一般的な検査では異常を発見するのが難しく、100%確実に診断するのは簡単ではありません。最近では「MIBG心筋シンチグラフィ」や、ドパミン細胞が減少している様子を画像でとらえる「線条体ドパミントランスポーター DATスキャン」などを用いることで、診断しやすくなりました。

治療の基本は薬物療法です。薬はおよそ20種類以上あり、患者さんの症状の現れ方を見ながら、種類や量を組み合わせて治療します。また貼り薬も登場しています。

ただ、長く服薬を続けていると、効いている時間が短くなっていきます。 薬が効いた状態の「オン」と、薬が切れた状態の「オフ」を、一日に何度も繰り返してしまうウェアリングオフ(薬が効きにくくなる)や、手足が勝手に動いてしまうジスキネジアも起こります。

いろいろな薬を組み合わせても症状が治まらず、困っている場合は、外科的な治療も選択肢の一つになります。 主治医とコミュニケーションを取りながら、長い目で見て治療を組み立てましょう。


進行期パーキンソン病に対する手術療法、脳深部刺激療法を中心に
講演・深谷親先生

今注目されている外科的治療の、脳深部刺激療法(DBS)について説明します。細くて柔らかい電極を脳の奥深くに入れ、胸の皮膚の浅い所に装置を埋め込んで、電気刺激で振戦やジストニアなどの症状を軽減します。日本では2000年にふるえ(振戦)に保険適応になり、2013年からふるえ以外の運動障害にも保険適応になりました。世界では14万人以上の人が手術を受けています。服薬だけでは日常生活に支障をきたすようになった場合、効果的な療法です。

DBSには2つの効果があります。
ウェアリングオフが表れた時、症状が出てしまう「オフ」の状態を、電気刺激によって薬の効果がある「オン」の状態まで持ち上げてあげるのが「底上げ効果」です。また、ジスキネジアのために十分な服薬ができない患者さんに、薬の代わりに電気刺激で「オン」の状態に持ち上げるのが「肩代わり効果」です。「底上げ効果」によって運動症状の日内変動を軽減することができ、「肩代わり効果」によって薬の不足分を補充、もしくは薬を減量できるなどのメリットがあります。

DBSを検討することになったら、まず1週間の検査入院をします。
そのうえで、本番の入院は2〜3週間ほど。

退院後も定期的に受診して経過を見て、刺激を調整します。パーキンソン病自体が治るわけではありませんが、医師と二人三脚で調整していけばDBSの効果は続きますし、健康寿命を長くすることができます。

楽しいことや、喜ばしいことがあると、ドパミンが出ることが分かっています。逆にがっかりするとドパミンは出てきません。パーキンソン病の治療の選択肢は確実に広がっています。病気になったからといって落ち込むのではなく、家族と一緒に最新の情報を理解し、前向きな気持ちで暮らすことが大切です。

熱心に耳を傾ける参加者。メモをとる姿も多くありました
熱心に耳を傾ける参加者。メモをとる姿も多くありました

患者さんの質問に、3人の先生が答えてくれました

Q1外科治療を考えるタイミングは? 年齢制限はありますか。

【深谷先生】一般的には、ウェアリングオフがあって、薬でのコントロールが難しくなった時に考えます。もちろん個々の状況によって違いますが、実年齢でなく体力的な面で考えていきます。若い時に発症した人には比較的早い時期にDBSを検討します。


Q2新しい薬など、今後パーキンソン病の治療はどうなりますか。

【永山先生】現実的なことでは、吸入器を使っての投薬法などが登場する可能性があります。主治医と相談して情報を共有していくことが大切です。


Q3パーキンソン病の体の痛みについて教えてください。

【下先生】パーキンソン病のほとんどの人が痛みを訴えます。ドパミンが減少すると痛みを感じやすくなるので、薬が切れている時に痛みを感じるのだと思います。薬でドパミンをコントロールし、治療をしっかり行いましょう。それでも痛みがとれなければ、整形外科で処方されるような痛み止めの薬、神経痛に使う薬などを使って痛みをやわらげることができます。




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