パーキンソン病の治療

手術による治療

パーキンソン病の手術治療として、脳深部刺激療法(DBS)が普及しています。DBSは脳に植え込んだ電極で電気刺激をすることで、パーキンソン病の症状を抑える治療です。DBSでは脳の深いところにある視床下核(STN)や淡蒼球内節(GPi)といった特定の場所を刺激し、各々STN-DBS、GPi-DBSと呼ばれ、いずれも通常左右両方に電極を植え込んで治療します。

STN-DBS、GPi-DBSの効果は2つです。オフを軽くすることと、ジスキネジアを抑えることです。つまり、当初は薬治療で安定していたけども、年月が経つにつれて病気が進行し、ウェアリング・オフやジスキネジアで困るようになってしまった患者さんの治療に役立ちます。DBSの効果は、パーキンソン病治療中の「治療の窓」の変化を知ることでよく理解できます。

初期の患者さんでは治療の窓が広いので、1日3回ぐらいの薬を服用することでこの窓の中に留まり続けることが出来ます。これがハネムーン期の状態です。進行してウェアリング・オフやジスキネジアが出ている患者さんでは、治療の窓が狭くなっています。このため、薬をきちんと飲んでも窓の中にとどまり続けることが出来ず、オフになったりジスキネジアが出る状態を一日のうちに何度も繰り返すようになってしまいます。

STN-DBSやGPi-DBSは狭くなってしまった治療の窓を大きく広げます。薬の調整と組み合わせることによって、再び治療の窓の中にとどまり続けることが出来るようになります。オフの状態が軽くなって、外出しやすくなったり、介助の必要性が低下します。

【患者さんの1日の様子 イメージ図】

DBSを導入することによってオンの時間は大きく増加し、STN-DBSで導入前の2.7倍、GPi-DBSで2.3倍になります。また、STN-DBS導入によってオフの時の症状が大きく改善し、その後は病気の進行の影響でゆっくり悪化するものの、運動症状、日常生活障害度のどちらも5年経っても導入前と比べて大きく改善した状態が保たれます。一方で、オンの時の症状はSTN-DBSでほとんど影響を受けず、病気の進行の影響でゆっくり悪化します。従って、オンとオフで症状や日常生活の落差が大きい患者さんが、DBSに向いていることになります。

DBSの効果は個人差がありますが、この個人差を決める大きな要因が、薬に対する反応性と年齢です。DBSは薬に対する反応がよくて、若い方が効果が高いことがわかっています。つまり、症状が進んで薬の効果が低下したり、高齢になってしまう前の方が効果が高いので、DBSによって得られるものも多いのです。一般的にはDBSを受ける年齢の目安は男性で70歳、女性で75歳程度までと考えられていますが、加齢には個人差がありますし、年齢とともにパーキンソン病と無関係な病気を合併することも増えます。実際にはパーキンソン病の病態に加えて、個々の患者さんの「若さ」、「体力」、「全身状態」も含めて総合的な判断がなされます。

執筆斎木 英資 先生(公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 神経内科) 

 

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