パーキンソン病の治療

薬による治療の問題点

薬治療、特にレボドパやドパミンアゴニストなどのドパミン補充薬による治療を適切に行うと、パーキンソン病の運動症状を大きく改善することが出来ます。特に初期の患者さんではほぼ不自由なく日常生活を送ることが出来る期間が数年続くことが多く、ハネムーン期と呼ばれます。

その後、少しずつ症状が進行して薬の効果の不足を感じるようになります。1日3回から4回十分な量のレボドパを服用しても効果の切れ目を感じるようになった状態をウェアリング・オフといい、その時の薬が効いた状態を「オン」、薬が切れた状態を「オフ」といいます。患者さんによってはウェアリング・オフと同じ頃から身体が勝手にくねくねと動く症状が出るようになり、これをジスキネジアといいます。初期のジスキネジアは薬が一番効いている時に出現し、これをピークドーズ・ジスキネジアといいます。病気が進行してくると薬の効きかけや切れかけの時にも出現し、これをバイフェイジック・ジスキネジアもしくはダイフェイジック・ジスキネジアと言います。

ウェリング・オフも軽いうちはオフの時に「すこし動きづらいなぁ」と思う程度で、日常生活に大きな支障は来しませんが、時間の経過とともにオフになった時の動作緩慢が強くなり、「かなり動きづらい」あるいは「動けない」と感じるようになります。また、オフの悪化とともにオフが次第に予想しづらくなって、さっきまでオンだったのに急にオフになるといった現象も出現するようになります。そのような状態になると、オンの時にはほぼ何でもできても、一旦オフになると自分では動けず、いつオフになるかもわからなくなってしまいます。近くのコンビニに行っても一人で帰ってこられないかもしれないと考えると外出もできなくなるなど、生活に大きな支障を来してしまいます。

ジスキネジアも軽いピークドーズ・ジスキネジアのうちは、むしろ周りの人が気がついても患者さんは意識してないことも多いのですが、ひどくなって踊るような状態になると自分で自分の体の動きをコントロールできないのでしんどくなります。ひどいジスキネジアで転んでしまうようなことも患者さんによっては出現します。また、バイフェイジック・ジスキネジアが出ると、効きかけや切れかけで自分の意志では十分動けないのに、くねくね・ばたばたする勝手な動きは止まらないので、辛く感じるようになります。

こうした、ウェアリング・オフやジスキネジアが出現する原因はドパミン神経細胞の減少です。病気の初期にはドパミン神経が比較的残っていますので、レボドパから作られたドパミンを貯蔵庫に保存して、必要に応じて使う事が出来ます。進行してくるとドパミン神経が減ってしまって十分ドパミンを貯蔵庫に保存できません。このため、薬と薬の合間にドパミンを使い切ってしまい、欠乏状態が生じます。これがウェアリング・オフの仕組みです。また、このようなドパミン神経が減ってしまった状態で十分に薬を効かせようとすると、常に十分に薬が行きわたるようにせざるを得ませんので、どうしてもレボドパの量はドパミン神経が処理できる能力を超えてしまいます。あふれたレボドパはドパミン神経以外の細胞でドパミンに転換されるのですが、そこにはドパミンの貯蔵庫がありません。そうするとそのままドパミンのオーバーフロー状態が生じて勝手に作用するのでジスキネジアが出るようになります。

以前は、レボドパを飲み始める時期が早いとウェアリング・オフやジスキネジアが出現する時期を早めると考えられていましたが、最近の研究で飲み始めの時期は問題ではなく、本質的にはパーキンソン病の進行が原因であることがわかってきました。

執筆斎木 英資 先生(公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 神経内科) 

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